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被相続人(亡くなった方)が、「全財産をAさんに遺贈する」という遺言書を残していた場合、相続人はどうしたらいいのでしょうか?
相続人には「遺留分」という、最低限もらえる相続割合があります。
相続人は、Aさんに対して、遺留分侵害額請求をすることで、最低限もらえる相続割合を、金銭で取り戻すことができます。
なお、相続人が兄弟姉妹のときは、兄弟姉妹には遺留分がありませんので、遺留分侵害額請求をすることはできません。
※ 民法改正により、「遺留分減殺請求」は、2019年7月1日以降に開始した相続からは、「遺留分侵害額請求」に変更されました。
遺留分侵害額請求権には時効があります。
遺留分侵害額請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知ったときから1年間行使しないときは、時効によって消滅します。
また、相続開始から10年を経過したときは行使できません。(除斥期間)
直系尊属のみが相続人の時は法定相続分の3分の1で、それ以外の時は法定相続分の2分の1です。
兄弟姉妹には、遺留分はありません。
相 続 人 | 遺 留 分 |
---|---|
配偶者のみ | 配偶者:2分の1 |
子のみ | 子:2分の1(複数いるときは均等割) |
直系尊属のみ | 直系尊属:3分の1(複数いるときは均等割) |
配偶者と子ども | 配偶者:4分の1 子:4分の1(複数いるときは均等割) |
配偶者と直系尊属 | 配偶者:6分の2 直系尊属:6分の1(複数いるときは均等割) |
配偶者と兄弟姉妹 (間違いやすいです。 ご注意ください。 ) | 配偶者:2分の1 兄弟姉妹:0 |
兄弟姉妹のみ | 兄弟姉妹:0 |
遺留分算定のための基礎となる財産の価額は、被相続人が相続開始時に有した財産の価額に、その贈与した財産の価額を加えた額から、債務の全額を控除した額です。
遺留分算定の基礎となる財産=①+②-③ | |||
---|---|---|---|
① | 相続開始時の財産 | ||
② | 相続人以外に対して、相続開始前1年間にした贈与 | ||
相続人に対して、相続開始前10年間にした特別受益としての贈与 | |||
当事者双方が、遺留分権利者を害することを知ってした贈与(期間制限なし) | |||
③ | 相続開始時の債務 |
※ ②の贈与が「負担付贈与」だった場合
②の贈与が「負担付贈与」だった場合は、「贈与の目的の価額」から、「負担の価額」を控除した差額を、基礎財産に算入します。
※「不相当な対価をもってした有償行為」の場合
不相当な対価をもってした有償行為(たとえば、1000万円の建物を100万円で売買した場合など)は、当事者双方が遺留分権利者を害することを知ってしたものに限り、有償行為の目的の価額(1000万円)から当該対価(100万円)を控除した差額(900万円)を、②の贈与額とみなして基礎財産に算入します。
遺留分侵害額 = 遺留分算定の基礎となる財産 ……上記(B) × 遺留分の割合 ……上記(A) - 遺留分権利者が受けた遺贈 又は 特別受益の額(期間制限なし) - 遺留分権利者が取得する遺産の価額(寄与分を除く) + 遺留分権利者が相続によって負担する債務の額
|
---|
※「遺留分算定の基礎となる財産」を計算するときに加算した相続人に対する特別受益は、相続開始前10年間のものに限定されていましたが、各相続人個人個人が侵害されている遺留分侵害額を計算するときには、その相続人が受けた特別受益は期間制限なく差し引きます。
《計算例》
父が死亡し、相続人は長男と次男。母は既に死亡している。
相続財産は、自宅(時価8000万円)と債務1000万円。
父の遺言により、長男が自宅(時価8000万円)と債務1000万円を相続した。
次男が相続した財産はない。
父は、3年前に長男に1200万円を贈与し、12年前に次男に1500万円を贈与した。この場合の、次男の遺留分侵害額を計算します。
「遺留分算定の基礎となる財産」= 8000万円+1200万円-1000万円
=8200万円
「次男の遺留分の割合」= 1/2×1/2
= 1/4
「次男の遺留分侵害額」=8200万円×1/4-1500万円-0+0
=550万円
《結論》
次男が長男に対して請求できる遺留分侵害額は、550万円となります。
遺留分を侵害している者が複数いる場合の、遺留分侵害額負担の順序と負担割合は次のとおりです。
① 遺贈➡死因贈与➡生前贈与
まず、遺贈と贈与があるときは、遺贈を受けた人が先に負担します。
遺贈を受けた人の負担だけでは足らないときに、贈与を受けた人が負担します。
② 最近の贈与➡昔の贈与
複数の生前贈与があるときは、相続開始時に近い受贈者から負担し、順次前の受贈者にさかのぼります。
③ 複数の受遺者、同時に受贈された複数受贈者は、その目的額の割合に応じて負担します。
ただし、遺言者が遺言で別段の意思表示があれば、その意思に従います。
① まず、相続人間で話し合います。
② なお、遺留分侵害額請求権は、1年で時効にかかります(民法第1048条)ので、配達記録付内容証明郵便を送るなどして、1年以内に請求した証拠を作成しておくことは重要です。
(民法第1048条 遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。)
③ そして、話合いがまとまらない場合には、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所、または、相手方と合意した家庭裁判所に、遺留分侵害額請求の調停を申し立てます。
調停は、裁判ではなく、話合いで解決を目指す手続きです。
話合いがまとまれば、調停調書が作成され、これは判決と同様の効力があります。
④ しかし、調停での話合いがまとまらなければ、調停不成立となり、訴訟を提起します。
訴訟の提起は、被相続人の最後の住所地を管轄する地方裁判所(140万円以下の場合は簡易裁判所)または、相手方と合意した地方裁判所(140万円以下の場合は簡易裁判所)に起こします。
できるだけ、話合いでの解決を探るよう努力することが大切です。
裁判になった場合、親族の関係は全く冷え切ったものとなり、死ぬまで口をきかない、といったことになりかねません。
遺留分侵害額請求を受けた者は、金銭で支払わなければなりません。
一括で支払うのが原則です。
しかし、金銭を直ちに用意できない場合には、分割払いや支払期限を延ばしてもらえないか、相手方と話し合いましょう。
それでも相手方が承諾してくれず、直ちに一括で支払うよう求めてくる場合には、裁判所に対し、金銭債務の全部または一部の支払いにつき、期限の許与を求めることができます。
期限の許与とは、支払期限の延長という意味です。
なお、金銭の支払いに代えて、相続した不動産などを現物給付したい場合には、遺留分権利者との間で、代物弁済の合意をする必要があります。
(不動産登記の原因は「代物弁済」となります。)
この場合には、譲渡所得税がかかる点に注意が必要です。
なお、「相続」を原因とする不動産登記をするためには、相続人全員での遺産分割協議が必要となります。
2025/4/20
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