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亡くなった父に6000万円の遺産があり、母はすでに亡くなっていて、相続人は兄と弟の二人だとします。
法定相続分で分けると、兄3000万円、弟3000万円となります。
しかし、兄は自宅を建てるときに、父から4000万円の贈与を受けていた場合、これでは不公平ではありませんか?
そこで、「特別受益の持戻し」を行います。
父の遺産6000万円に、兄がもらった生前贈与4000万円(特別受益)をプラスして、遺産が1億円あったことにします。(「みなし相続財産」といいます。)
1億円を法定相続分で分けると、兄5000万円、弟5000万円となります。
しかし、兄はすでに4000万円をもらっているので、5000万円ー4000万円の1000万円を相続することになります。
弟は、5000万円を相続します。
このように、「特別受益」の制度は、遺産分割を公平にするためのものです。
特別受益となる財産は、被相続人から相続人に対してなされた
①遺贈された財産
②婚姻や養子縁組のために贈与された財産
③生計の資本として贈与された財産
です。
なお、生命保険金は受取人の固有の財産であり基本的には特別受益にはなりませんが、あまりにも高額だったり、相続人間の不公平が著しい場合は、特別受益となります。
生命保険金の額が、いくら以上だと「不公平が著しい」と言えるかという点ですが、遺産総額の6割が目安と言われています。
遺贈とは、遺言によって、無償で財産を与えることです。
相続人への遺贈は、すべて特別受益となります。
なお、遺贈はすでに相続財産に含まれているため、みなし相続財産を計算する時には、「生前贈与のように相続財産にプラスする」ということはしません。
結納金や挙式費用は、通常は特別受益にはなりません。
持参金や支度金は、特別受益となります。
しかし、その額が少額で、被相続人の生前の資産や生活状況に照らして、扶養の一部と認められる場合は、特別受益になりません。
高等教育の学費は、被相続人の生前の資産及び生活状況に照らし、扶養の一部と認められる場合は、特別受益にあたりませんが、一人だけ私立の医学部を出ていた場合の学費などは、特別受益にあたります。
不動産の贈与は、特別受益にあたります。
住宅を購入するための資金や、事業の開業資金も特別受益にあたります。
ある程度まとまった金額の金銭の贈与は、親族としての通常の援助の範囲を超える場合は、特別受益にあたります。
死亡退職金は、原則として、特別受益にはあたりません。
被相続人名義の建物に、無償で同居していた場合の建物賃料相当額は、特別受益にはあたりません。
対 象 | 特別受益かどうか |
---|---|
遺 贈 | 特別受益 |
婚姻や養子縁組の結納金や挙式費用 | 特別受益でない |
婚姻や養子縁組の持参金や支度金 | 資産・生活状況で判断 |
私立の医学部の学費 | 特別受益 |
不動産の贈与・不動産購入資金の贈与 | 特別受益 |
事業の開業資金 | 特別受益 |
金銭の贈与 | 親族としての援助を超える場合は、特別受益 |
死亡退職金 | 特別受益でない |
無償で同居していた時の賃料相当額 | 特別受益でない |
生命保険金 | 高額で不公平が著しい場合は、特別受益 |
被相続人は、「特別受益を相続財産に持戻して計算し直さなくてもよい」と決めることができます。
これを、「持戻し免除の意思表示」といいます。
持戻し免除の意思表示は、方式の定めや時期の制限がないので、生前行為でも遺言でも、明示でも黙示でもいいのですが、紛争防止のためには、遺言書にきちんと記載しておくのがいいでしょう。
持戻し免除の意思表示があると、特別受益は考慮せずに、残った遺産だけを分けることになります。
令和元年7月の民法改正により、婚姻期間が20年以上の夫婦の場合の自宅の贈与・遺贈については、「持戻し免除の意思表示があったものと推定する」ことになりました。
「推定する」とは、「反対の証拠がない限り、そのように取り扱う」ということです。
被相続人が、「自宅の贈与については、持戻し免除はしない。特別受益として持戻すように。」と遺言書に記載するなどしていない限り、「持戻し免除の意思表示をした」として取り扱うことになりました。
① 20年以上の婚姻期間がある夫婦の場合に
② 夫婦の一方が、他の一方に対して
③ 居住している建物又は敷地を
④ 遺贈又は贈与したときには
持ち戻し免除の意思表示があったものと推定する
この改正によって、夫が生前、結婚して20年以上経つ妻に自宅を贈与していた場合に、遺言で「持戻し免除の意思表示」をしなくても、自宅の価額を特別受益として持ち戻さなくてよくなりました。
妻は、遺贈または生前贈与された自宅とは関係なく、相続財産の法定相続分がもらえることになり、配偶者が優遇されることになりました。
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2025/4/20
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